閉鎖されたキュレーションサイトの元ライターが語る真実

2016年11月、大手キュレーションサイトが次々に閉鎖に追い込まれた。

発端は、事実とは異なる内容の掲載や著作権侵害など、いくつかの問題を指摘されたことだったが、さまざまなニュースやメディアなどで取り上げられるなか、キュレーションサイトを始めとするネット上のメディアのあり方が議論されるなど、波紋を広げた。

プロライターキャッチでは、該当メディアで記事作成に携わっていたライターSさんにコンタクトを取り、当時の制作環境について実態と問題点を探るとともに、ライターとしてWebサイト掲載用の記事作成にどのように向き合うべきかについて聞いてみた。

【Sさん プロフィール】
■性別:男
■年齢:20代

 
【目次】

 

規定本数を納品しないと、報酬が半額になってしまうシステム

閉鎖されたキュレーションサイトで約1年間ライティングに携わったというSさん。
まずは、どのような記事を作成していたのか聞いてみた。

プロライターキャッチ
主にどんなジャンルで書かれていたんですか?

Sさん
美容関連の記事や、恋愛、ファッションといった若者向けのライトなテーマを扱った記事を書いていました。
プロライターキャッチ
具体的にはどんな内容ですか?
Sさん
美容関連でいえば、特定のサプリメントによるダイエットの紹介や効果、注意点などを解説した記事。
恋愛系なら、おすすめのデートスポットや同棲するのに理想的な部屋の間取りや広さについて書いたものなどです。
プロライターキャッチ
記事の納品ペースはどのくらい?

Sさん
月間100本ほどですね。報酬は、記事1本あたり1,500文字で1,500円だったのですが、規定の本数を納品しないと半額に下がってしまうという報酬体系だったので、ライター側にも「本数を多く納品しなければ」という意識は生まれていたと思います。

 
 

システム上に書きかけの記事が放置されていることも

当該メディアでは、ライティング業務のほかに、ライターから納品された記事の校正・リライト業務もこなしていたSさん。
制作体制に問題はなかったのか、そのあたりを探ってみた。

プロライターキャッチ
業務をしていて、制作体制に不備を感じるようなことはありましたか?

Sさん
ライティング業務のフローは、独自のシステム上に挙げられたキーワードリストからライターが書けそうなものを選び、注意事項を確認してから執筆、納品するという流れでした。
各キーワードにはサジェストワードというものが設定されていて、記事中になるべく多く入れることが推奨されていました。
プロライターキャッチ
ライターとしては、制作しやすい環境だったんでしょうか?
Sさん
書きたいキーワードが選べる点や、執筆すべき内容を把握しやすかった点は良かったですね。
ただ、外注ライターの数が多いので、キーワードの選定はバーゲンセール状態でした。
また、なかには、書きかけた記事を途中で放置してしまうライターもいて、それがそのままになっているのは、ストレスでした。
プロライターキャッチ
ライターとしては、制作しやすい環境だったんでしょうか?
Sさん
はい。納品は、システム上に直接入稿する方式だったので、いざ納品しようとしたらすでにテキストが入っていて、それを消してから自分が書いたものを入れなくてはならないことがあり、効率が悪いと感じました。
プロライターキャッチ
リライト業務では、いかがでしたか?

Sさん
自分が担当していないリライト記事についての修正依頼が何度も来て、そのたびに「自分の担当している記事ではない」ということを連絡していました。管理がずさんなのではないか?と思いましたね。

 
 

チェック体制には疑問を抱いていた

Sさんの話から、外部に多くのライターや校正を抱えて制作していた実態が浮き彫りになった。
発注者としてそれを監督する体制には問題がなかったのだろうか?

プロライターキャッチ
ライターの記事を校正・リライトしたあとは、発注者側でもチェックが行われていたんでしょうか?
Sさん
コピペチェックなど、一応はされていたようです。ただ、やはりライター数、記事数に追いついていないようで、先ほどの書きかけ記事の例にあるように、チェック体制の甘さは感じていました。
プロライターキャッチ
ニュースなどでは、同社の著作権侵害についても指摘されていましたが、そのあたりについてはいかがですか?

Sさん
たとえば、画像については、一応、画像提供サービスと提携していて、そこからイメージに合う画像を選んで使うことになっていました。ただ、システム上、どこからダウンロードした画像でも保存できるようになっていたんです。おそらく、チェックし切れていなかったのではないかと思います。

 
 

メディアの閉鎖後、収入はそれまでの半分に

当該メディアが閉鎖されたことは、外注ライターにとっても大きな打撃となった。
Sさんに、収入への影響のほか、今回の件以降、ライターとして案件の選び方などに変化は起きたかどうかを聞いてみた。

プロライターキャッチ
当該メディアが非公開となった後、やはり収入は減りましたか?
Sさん
はい。月額で10万円ほどの減収でした。ほかのクライアントからの仕事も受けていたのですが、当該メディアに収入の半分を依存していたので。
プロライターキャッチ
収入に関して、現在はいかがですか?
Sさん
一時的には減ったものの、既存のクライアントが報酬を上げてくれたり、新規のクライアントを見つけるなどしたため、徐々に回復してきました。
プロライターキャッチ
今回の問題をきっかけとして、ライティング案件の選び方に変化はありましたか?
Sさん
はい。それまでは、キュレーションサイトの案件を引き受けることが多かったのですが、今回のことがあってからは「ライターとして成長できるかどうか?」を基準として案件を選ぶようになりました。
プロライターキャッチ
たとえば、どんなことを判断材料にしていますか?

Sさん
文字数制限が設けられず、テーマを深く掘り下げて執筆できることなどですね。

 
 

すべてのライターはプロ意識を持って案件に臨むべき

今回起きたような問題は、メディア運営者だけでなくライターにとっても他人事ではない。
では、ライターとして自衛するためにはどうしたら良いだろうか。

プロライターキャッチ
仮に、今回の問題が紛糾しなかったとしたら、いまも当該メディアでのライティングを続けていたと思いますか?
Sさん
いえ、長く続けることはなかったと思います。問題が大きくなる前から、私のほかにも異変を感じていたライターさんは多かったと思いますよ。
たとえば、気軽なお小遣い稼ぎ感覚で簡単に書きたい人にとっては、何も考えずに書ける理想的な環境だったかもしれませんが、ライターとしてのプロ意識がある人なら長期的に書きたいとは思えなかったはずです。
プロライターキャッチ
結果的に、さまざまなニュースやメディアに取り上げられて大問題になりましたが、制作に関わっていた当事者としての率直な感想を教えてください。
Sさん
報道された当初は、ここまで問題が発展し、長引くとは思っていませんでした。
今回のことで、多くのキュレーションサイトが納品物のチェックに気を遣うようになり、より不正ライティングの取り締まりを強化しています。
気楽に稼ぎたい副業ライターには厳しくなったのかもしれませんが、ライター1本でやっている意識の高い人にとっては、高品質の記事を安売りする必要のない、より良い環境に変化してきているのではないかと思っています。
プロライターキャッチ
今回のことを受けて、同業のライターさんたちへのメッセージをお願いします。

Sさん
まず、コピペなどの基本的な著作権問題に関して正しく認識する必要があります。
そして、副業ライターだろうとフリーライターだろうと、自分が納品したものがクライアントへ与えるダメージについて再度認識し、報酬を受け取る以上は「プロ意識」を持って臨むべきしょう。

 
 
――Sさん、ありがとうございました。

コメントは利用できません。